投稿日:2018.9.7 / 最終更新日:2018.9.15

ミョウガの食べ過ぎで忘れ物が多くなる?

                    

初夏に旬を迎える「ミョウガ」。冷奴や麺類の薬味として食べるケースが多いですね。冷奴と一緒に食べると、豆腐の淡泊な味にも彩りを加えてくれます。シャキシャキとした歯ごたえが良いアクセントになりますし、何より鼻に抜ける香りがいいですよね。

でも、この「ミョウガ」、美味しいのですが、気になるのが、あの「言い伝え」。「ミョウガを食べ過ぎると忘れ物が多くなる」。これって本当なのでしょうか?

ミョウガ

ミョウガを食べ過ぎると忘れ物が多くなる?

結論から言うと、これは迷信なんです。では何故、「ミョウガを食べ過ぎると忘れ物が多くなる」と言われるようになったのでしょうか?

ミョウガという名は、お釈迦様のある弟子の話に由来しているのです。そのお弟子さんの名前は、周利槃特(しゅりはんどく)と言います。周利槃特は、兄の摩河槃特(まかはんどく)と一緒にお釈迦様に弟子入りしました。兄の方は、たいへん賢く、お釈迦様の教えを深く理解し、仏教に励んでいました。一方、弟の周利槃特は物覚えが悪く、なんと自分の名前すら覚えることができなかったそうです。托鉢に出かけても、お釈迦様の弟子として認めてもらえず乞食坊主扱い。お布施を貰うことが出来ず苦労していました。

お釈迦様はこれを憐れみ、名前を書いたのぼりをこしらえて「明日からこれを背負って托鉢に行きなさい。もし名前を尋ねられたら、のぼりを指差しなさい。」と言われたそうです。翌日からのぼりを背負っていくと、人々はお釈迦様の書かれたのぼりをありがたがり、多くのお布施をもらうことができるようになったそうです。

兄は、物覚えの悪い弟に、お釈迦様の教えを覚えさせようと努力していましたが、弟は、いっこうに覚えられない。弟は自分の不甲斐なさに涙していたそうです。それを見ていたお釈迦様は「自分が愚かであると気づいている人は、知恵のある人です。自分の愚かさを気づかないのが、本当の愚か者です。」といわれ、ほうきを周利槃特に渡して「ごみを払おう、あかを除こう」と唱えて掃除をしなさいと教えた。

その日から周利槃特は、毎日「ごみを払おう、ちりを除こう」と唱えながら掃除をし続けました。雨の日も、風の日も。やがて「おろか者の周利槃特」と呼ぶ人はいなくなり、「ほうきの周利槃特」と呼ばれるようになりました。数十年が経ち、周利槃特は自分の心のごみやあかを全て除き、阿羅漢と呼ばれる聖者の位にまでなったのです。お釈迦様は、「悟りを開くということは決してたくさんのことを覚えることではない。わずかなことでも徹底すればよいのである。周利槃特は徹底して掃除をすることでついに悟りを開いたではないか」と大衆の前でおっしゃっられました。

その後、周梨槃特が亡くなり、彼のお墓に見たこともない草が生えてきました。周梨槃特が自分の名を背に荷(にな)って努力し続けたことから、この草は「茗荷(みょうが)」と名づけられたそうです。

落語で広まる

古典落語の「茗荷宿(みょうがやど)」というお話。とある宿場町の外れに宿屋があり、その宿屋の夫婦が「客が来ない」と嘆いていました。そこに売掛金を集金した帰りの商人が宿泊にきました。商人は、200両を帳場で預かって欲しいと言ってきました。そこで宿屋の夫婦は、ミョウガをたくさん食べさせれば、帳場に預けた200両を忘れてしまうのではないか?と画策するのです。

最後は、商人が「売掛金ではなく、宿代を払うことを忘れた」というオチになります。もしかしたら、ミョウガの迷信は、落語の「茗荷宿(みょうがやど)」が広まったのかもしれません。

ミョウガの栄養は?

ミョウガで「忘れ物が多くなることは無い」のは、わかりましたが、では、どういった栄養成分があるのでしょうか?

アルファピネン

針葉樹にも含まれているアルファピネン。リラックス作用があります。血液循環を調整する働きがあり、血行をよくしてくれます。大脳皮質を刺激して覚醒を促す作用もあるため、眠気を覚ましてくれ、集中力を高めてくれます。

ただし、アルファピネンは揮発性のため、高温での調理で失われてしまいます。だから、みょうがは生食がおススメ。生のまま刻んだり、細かく切ったりすると香りが際立ちます。

カリウム

体内の余分な塩分を、身体の外へと排出する働きを持つカリウム。血圧や心拍数を下げる作用がある。

カンフェン

抗炎症作用で身体を冷却する作用があり、夏バテ対策のウレシイ味方!血液をサラサラにしてくれます。

ゲラニオール

鎮痛作用や鎮静作用があります。血液の循環を促進して血液をサラサラにしてくれます。ミョウガを直接患部に当てて使用されることもあります。

ミョウガジアール

辛み成分。血液の流れをよくしてくれます。

アントシアニン

ミョウガの赤紫色はアントシアニンによるものです。ポリフェノールの一種で抗酸化作用があります。目の網膜にあるロドプシンの再合成を助け、視覚機能を改善してくれます。目の疲れをとってくれて、眼病予防にもなります。

まとめ

ミョウガは「食べ過ぎると忘れ物が多くなる」は迷信。それとは逆に生で食べると、眠気を覚ましてくれ、集中力を高めてくれる成分が入っているので、脳が覚醒して、忘れにくくなる。今まで気にして食べてこなかった方も、これからは安心して食べれますね。